伊東豊雄

「コンペに勝つ」という何ともキャッチーなタイトルの講演会を聞いてきた.
朝飯を食べながら昨日の講演をふりかえり「本当にモダニズムは終わってしまったんだな〜」と何だかシミジミ


どういうことかというと
モダニズムにしてもポストモダニズムにしても、そういう概念と言うかアイディアがまずあって、それを実現するためにいろいろな建築がつくられてきたわけです。その言葉が何をさすのかは曖昧だったとしても、実現すべき目標があらかじめ言葉で示されていたことは事実でしょう。目標でなかったとしても、自分のポディションは、それを否定するという形でも明確にすることができたはずです。


モダニズム」「ポストモダニズム」はもちろん、古くは「新建築」「新興建築」「日本国民建築様式」「民衆の建築」「近代主義建築」どれも結局は言葉であって、そうした言葉が建築物に先行する形で存在していたました。


でも伊東さんは違うような気がします。
確かに「何か新しいものをつくりたい」という姿勢は共通していますが、それが何か1つの言葉に収束してゆくかというとそうではないように思えるのです。実現すべき建築の理念が明確にあってそれに向かっているというよりは、「新しい」とか「楽しい」とか、そういう個人的な感情によって建築が形づけられている気がします。建築をつくる動機が、社会的理念から個人的感情に移っているともいえるかもしれません。ただ建築家は昔から自分の意思でつくってきたわけですから、建築に先行する理念で自分の建築を語ることをやめてしまったと言った方がいいかもしれません。
(つづく)