003 物理学者、ウォール街を往く。クオンツへの転進(エマニュエル ダーマン)

少し前に話題になった本だがようやく読む事ができた。著者が自身の半生を振り返る中で、物理学や金融工学の当時の様子が生々しく語られる。金融に関しては何の知識もない僕にとっては、専門用語も多く、理解できないところもあったが、それを差し引いても十分楽しめた。
本書の魅力の一つは登場人物の多彩さだろう。今では完全に歴史の一部となっている物理学者の名前が著者が実際に交流のあった人物として多数登場する。それ以外にも会社の同僚などなかなか癖のある興味深い人物が数多く登場する。しかしながら、本書の最大の魅力は、全体ににじみ出る著者の人柄そのものだと思う。市場を完全にモデル化する事はできないが、それにちかい近似値を求め続けるという姿勢も共感できた。金融工学素人の僕にとってはよい入門書だった。